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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
TEL.03-5688-7816
FAX.03-5688-7803


週刊がん もっといい日
2006年Vol.38
12月15日更新


12月8日更新内容 全記事はこちら

今号から胃がん発症に関与する「ピロリ菌」の連載をスタートします

 近年、「ピロリ菌」という言葉がしきりにマスコミ紹介されています。胃がんの発症とピロリ菌との関係についての研究が、盛んに行われるようになったからですが、ではピロリ菌とはどのようなものなのでしょうか。
 ピロリ菌の正式名は、ヘリコバクター・ピロリ菌ですが、小冊子『健康な胃をとり戻そう』(杏林大学医学部第三内科・高橋信一教授監修)によれば、名前の由来は、ヘリコとは「らせん」「旋回」という意味があり、ピロリ菌は、ヒゲの部分をヘリコプターの羽のように回転させながら移動すること。バクターとは、バクテリア(細菌)、そしてピロリとは、胃の出口(幽門)をさすピルロスからきていること。このピロリ菌は、胃の幽門部から初めて見つかりました。
 そこで『週刊がん もっといい日』編集部では、ピロリ菌と胃がんとの関係、ピロリ菌の早期発見と除菌による胃がん予防の可能性について、今回から連載をスタートします。ピロリ菌はどうしたらみつけることができるか、どうしたら除菌できるのか等々。ご期待ください。
 それでは、今週もまた、皆さまにとって「もっといい日」でありますように・・・。

『週刊がん もっといい日』編集部 山本武道


☆☆☆「週刊がん もっといい日」VOL.38☆☆☆



『週刊がん もっといい日』編集部からのお知らせ

「がん治療と緩和医療の啓蒙と促進」を目的として養老孟司氏と精神科医の和田秀樹氏と
ともに書籍制作に携わる東大医学部附属病院の中川恵一放射線科助教授(緩和ケア診療部長)からメッセージが届きました

「恩師と教え子を代表して」

中川恵一

 このたび、著書『死の壁』などで話題を呼んでいる養老孟司先生と、幅広い活躍をされている精神科医の和田秀樹氏(同級生)とともに、がん治療と緩和医療の啓蒙と促進を目的とした書籍の制作に携わることとなりました。
 前作の養老先生との共著『自分を生ききる』を発展させた老いや緩和医療(とくに、がん)、日本人の死生観について、わかりやすく解説した書籍で、対談や講演などでそれぞれの著者が専門をふまえてお話しされた内容を読みやすい構成で展開した、今後の日本人のあり方や日本の緩和医療のあり方を考察するものです。
 小学館刊の前著(『自分を生ききる-日本のがん治療と死生観-』)に引き続いて、恩師と本を出版させていただくことは、夢のようです。また今回加わってもらった和田医師は、畏友かつ悪友で、今も飲み歩く仲です。テレビでみる姿とは少し違いますが、とても優秀な臨床医であり、深く鋭く日本を見つめ続けています。
 和田医師も私も、あんまり(ほとんど?)授業には出なかった方ですが、養老先生の講義には、そろって出席していました。とてもユニークで、おもしろかったからです。25年前のことになりますが、いまだに懐かしい思い出です。 
 あれから、お二人は超有名人になられ、私は、がん治療の現場で、放射線治療と緩和ケアに取り組んでいます。今回、教え子二人が、恩師の胸を借りることになったわけで、感無量のものがあります。
 日本人にとって、がんは最大の関心事になっています。がんは老化の一種ですので、世界一の長寿国の日本は、世界一のがん大国です。ボケも日本人が非常におそれるもので、元気に長生きしてぽっくり死ぬ、「ピンピンコロリ」が理想の死にざまのようです。
 しかし、本当にそうでしょうか? 日本人の二人に一人はがんになりますが、これは、がんになるほど長生きをしている証拠でもあります。アンチエージングがはやりですが、老いや死は本当にいけないことでしょうか?
 実のところ、がんとボケはとても似ています。からだの老化ががんであり、脳の老化がボケなのです。長生きをすれば、どうしても避けることができないものと言えます。
 そもそも、がんを克服しても、ボケなくても、人間の死亡率は100%です。養老先生が繰り返し指摘されていることですが、現代日本は「自分は死なない」ということが前提の社会です。「死」は日常にも、人々の意識のなかにもありません。このことは、老人医療やがんの治療にも大きな影響を与えています。
 老いとその先にある死を認めない日本は、どこかヘンです。また、ものごとを白か黒かでわりきれるものではありません。善か悪か、がんかがんでないか、老人か若者か、ときめつけるのはやっぱりヘンです。
 この本では、この日本の社会と医療の根底にある「ヘン」に切り込んでいます。養老先生と和田氏の東大での講演、養老先生と筆者、和田氏と筆者の対談のほか、新聞や雑誌に連載した記事などをもとにしています。快く掲載を許可いただいた関係諸氏に、この場をお借りして感謝申し上げます。
 限りのある命を大切にして、今ある時間を大事に生きることを考えていきたいと思います。この本をとおして、みなさまの人生が、より素敵になることを願っています。

 放射線治療の普及に全力を注ぐ中川助教授が、養老孟司氏と精神科医の和田秀樹医師と3人で制作する書の発行に期待しましょう。


胃がん予防キャンペーン
 連載―話題を追って
『ヘリコバクター・ピロリ菌の早期発見と除菌による胃がん予防の可能性』

日本人に多い胃がん。その発生要因はさまざまですが、近年、胃がんの罹患にヘリコバクター・ピロリ菌が関与していることが明らかにされる一方、ピロリ菌の早期発見と除菌の必要性が指摘されています。では、どのようにしたら胃がんの発生リスクの高いといわれ
るピロリ菌の存在を突き止め、胃がんを予防することができるのでしょうか。話題を追ってシリーズでは、ヘリコバクター・ピロリ菌の早期発見と除菌による胃がん予防の可能性について紹介していくことにします。第1回目は、『胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌の関係』を明らかにした厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の研究報告です。

ピロリ菌感染者は感染していない人に比べ胃がんになる危険性が
5倍以上〜大規模疫学調査で示された胃がんとピロリ菌の関係


第1回
『胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌の関係―厚生労働省研究班
(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の研究報告から』

胃がんの原因の一つとされているヘリコバクター・ピロリ菌。しかし実際に、ピロリ菌が胃がん発生にどの程度関与しているのか、どのような条件でどれくらいリスクが高くなるかなど、詳しいことはあまりよく分かっていなかった。そんななか、国立がんセンターの津金昌一郎01部長を主任研究者とする研究班が、保存血液を用いて、ヘリコバクター・ピロリ抗体(HpAb)などと胃がんリスクとの関係を調べた結果、ピロリ菌感染者の胃がんリスクは、非感染者の5.1倍になることが分かった。


●胃がんの発生について15年間の追跡データ(4万人)を用いて行われた

 この研究は、1990年に開始された、「多目的コホート研究」と呼ばれる、全国14万人を20年追跡調査する計画の大規模長期疫学研究のなかで、血液を提供してくれた40〜69歳の男女約4万人(全国10保健所管内)を、胃がんの発生について約15年にわたり追跡したデータを用いて行われたものだ。
一般住民を対象とした大規模疫学調査の結果として、胃がんとピロリ菌の関係を探っていく上で大きな足掛かりとなる研究といえる。研究結果は、医学専門誌や日本癌学会で発表された。
追跡期間中に胃がんが発生した512人に対して、胃がんにならなかった人から、年齢・性別・居住地域・採血時の条件などをマッチさせた人を1:1になるように選び、HpAb陽性グループと陰性グループなどで、他の胃がん関連リスク要因の影響をできるだけ取り除いて、胃がんリスクの比較分析を行っている(分析対象は抗体測定に成功した合計1,022人)。
 研究班は、この方法の特徴として、「がんになった人の、がんになる前の血液を用いた研究」ということを挙げている。このような、一般住民を対象とした前向きの研究計画では、胃がんになった後の血液を用いた病院ベースの症例対象研究などに比べ、より確実なリスクを知ることができるという強みがある。

●胃がんリスクとの関連性について

 胃がんリスクとの関連性を調べた血液の検査項目は、次の三つ。
1.ヘリコバクター・ピロリ抗体(HpAb)
  ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる。

2.CagA抗体(CagA)
  胃がんの前がん病変である萎縮性胃炎が進むと、ピロリ菌は胃のなかにすめなくなり、やがて抗体も検出されなくなる。CagAは、ピロリ菌の病原性を決めるタンパク質の一つで、このタンパク質の遺伝子をもつピロリ菌は毒素が強く、胃炎などを起しやすくさせる。日本人が感染している多くは、このタイプ。HpAb陰性でも、CagA陽性であった人は、症状が進んだためにHpAbが消えたものと考えられる。

3.ペプシノーゲン(PG)
  萎縮性胃炎の度合いを示し、診断に用いられるマーカー。陽性は3段階(+から3+)で判定される。

 胃がんリスクとの関連性を調べた血液の検査項目は、次の三つ。 以上の項目で、グループ分けして胃がんリスクを比較した主な分析結果をまとめると、以下のようになる。
★ピロリ菌に感染していた人(HpAb陽性)の割合
「胃がんになったグループ」…94%
「胃がんにならなかったグループ」…75%。
「ピロリ菌感染者の胃がんリスクは、非感染者の5.1倍」になった。

★隠れ陽性者(HpAb陰性でCagA陽性)を含めるとピロリ菌に感染していた人の割合
「胃がんになったグループ」…99%、「胃がんにならなかったグループ」…94%。「過去に感染したことがある人を含めた感染者の胃がんリスクは、非感染者の10.2倍」となった。

★PG判定で胃がんリスクを比較
 「慢性萎縮性胃炎にかかっている人の胃がんリスクは、かかっていない人の3.8倍」になった。さらに、「もっとも強い慢性萎縮性胃炎(3+)にかかっている人の胃がんリスクは、かかっていない人の4.6倍」になった。

★PG結果にHpAbを組み合わせて胃がんリスクを比較
  どちらも陰性だった人に比べ、「萎縮性胃炎にはかかっていないがピロリ菌に感染している人は4.2倍、「ピロリ菌感染はみられないが萎縮性胃炎にかかっている人」は4.9倍と同レベルのリスクが分かった。
  さらに「萎縮性胃炎にかかっている上にピロリ菌に感染している人は10.1倍」と一気に跳ね上がることが分かった。

●胃がんリクスを高くする生活習慣の改善と定期的な検診の必要性

 このように、今回の研究ではピロリ菌感染及び慢性萎縮性胃炎が、いかに胃がんのリスクを高めるかが、あらためて確認された結果となっている。ただし、日本人の中高年者の大半は実際にピロリ菌感染者だが、もちろん、その全員が胃がんになるわけではない。
 今回の研究の対象となった集団でも、隠れた陽性者を含めたピロリ菌感染者の割合は9割以上にも関わらず、4万人を15年観察し続けて胃がん発生が512人と、発生の頻度は決して高くないことがわかる。
 胃がんの予防について研究班は、「ピロリ菌は、胃がん発生の大きなリスク要因ではあるが、健康な人でも除菌による胃がん予防効果があるかどうか、確実な証拠はまだ揃っていない。まず高塩分の食事や喫煙、野菜・果物不足など、胃がんリスクを高くするような生活習慣を改善し、そのうえで萎縮性胃炎と診断された人は、定期的な胃がん検診を受けることをお勧めします」と話す。(取材・文◎新井 貴)

*この研究について詳細を知りたい方は、研究班のホームページをご覧ください。
(「厚労省研究班による多目的コホート研究:http://epi.ncc.go.jp/jphc/」)

トピックス
日本癌学会学術総会で注目集めたピロリ菌感染を見つける装置
日本癌学会学術総会で注目を
集めた呼気中の
13CO2分析装置
 ピロリ菌を除菌することが胃がんの発生を抑制するーピロリ菌の早期除菌によって、発がんリスクが軽減されることが明らかにされつつありますが、先ごろ横浜市内で開催された日本癌学会学術総会の展示場で、体内のピロリ菌の有無を調べる機器が紹介され注目を集めていました。
ピロリ菌の存在を調べる機器は、ヘリコバクター・ピロリ菌感染診断用剤(尿素製剤)を服用しない前の呼気を採取、その後、同薬剤を空腹時に水100mlで服用し20分後の呼気を採取し、呼気中の尿素を分析することによって、2分で陽性(ピロリ菌が存在)か陰性かを見分ける赤外分光分析装置です。いわば飲酒運転時のアルコール量を測定するような機器ですが、ピロリ菌の存在が確認されれば、適切な治療へ導くことができるとあって、同装置を採用する医療機関が増えているそうです。
がん予防の重要性が指摘されるなか、これまでは十二指腸潰瘍や胃潰瘍の確定診断の際には内視鏡による検査が行われてきましたが、この装置と薬剤を使えば、その必要がなく、また除菌後判定も簡単にできるというメリットが期待できます。
胃がん発生のリスクを抑えられる武器の一つとして、ピロリ菌感染の早期発見と除菌療法に注目しましょう。
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