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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
TEL.03-5688-7816
FAX.03-5688-7803


週刊がん もっといい日

『もう治療法がない≠ニ言われた再発進行がんの未承認抗がん剤という選択肢』
<未承認抗がん剤:取材プロジェクトチーム>

連載第1回
(07.2.23)
連載第2回
(07.3.30)




第1回

『一刻も待てない、がん患者さんたちの苦悩』

『もう治療法がない≠ニ言われた再発進行がんの未承認抗がん剤という選択肢』

<未承認抗がん剤:取材プロジェクトチーム>

 海外では標準的に使われている抗がん剤でも、日本ではまだ未承認のため通常の保険医療では使えない欧米のお薬はたくさんあります。編集部には、そんな未承認薬のことを知りたい、使ってみたいという再発進行がんの患者さんたちからの問合せが多数寄せられてきます。その多くは主治医から「もう治療法がない」といわれ、藁をもつかむ思いで残された可能性にかけてみたいというものばかり。
では、どのようにして未承認薬を使ってくれる医師を探せばいいのか、実際に未承認薬を使ってどの程度の効果が得られているのか、そしてまた、どのようなリスクを負わなくてはいけないのか。この連載シリーズでは、「未承認抗がん剤という選択肢」について、賛否両論幅広く、がん患者さんや医療従事者たちの生の声をお伝えしていくことにします。
 第1回目はがん患者さんから多くの相談が持ち込まれる二つの団体に「未承認抗がん剤の使用」の要望について、どのようなスタンスで対応をされているのかを聞いてみました。

■日々、編集部に問い合わせが相次いでいる・・・

「編集部さんですか。実は、未承認抗がん剤のことで、お聞きしたいことがあるのですが・・・」
 ある日の夕刻、夫人が「末期がん」という中年のサラリーマンから電話がかかってきました。
「お宅の奥さんには、保険適用の抗がん剤では、もう効果がありません」
主治医から宣告されたサラリーマンは、「どうしていいやら・・・」途方に暮れ、たまたま知人から、がん情報サイト『週刊がん もっといい日』のことを伝え聞き、編集部に連絡されたのでした。
 自分の愛する家族が、「もはや、これ以上、保険適用の抗がん剤では治療をすることができない」と主治医から告げられたとき、患者さんと家族の心境は、おだやかではありません。
「でも何とかしたいが、どうしたらいいだろうか」―苦難な日々が続くことになります。
「そう言えば、がんの情報誌で未承認抗がん剤の記事が掲載されていたけれども、果たしてどのようにしたら未承認抗がん剤を入手することができるのでしょうか」「でも、せっかく未承認抗がん剤が用意できても、どのお医者さまのもとにいったらいいのでしょうか?」
患者さんもしくは家族が、未承認抗がん剤を入手することができたとしても、その薬剤を積極的に使用する肝心な医療機関は、まだ少ないのが現状です。
こんな電話もありました。
「どこでもいいですから、使用してくださるお医者さまを教えてください。できれば名古屋近辺でいませんか?遠距離だと、通うことができなくなっては困るんです」
 愛知県在住の女性患者さんからでした。
 厚生労働省では、昨年から未承認薬問題検討会を開催し、抗がん剤の早期承認についても、専門家によって話し合いが行われていますが、「健康保険に収載されている抗がん剤では効果がない」と宣告された患者さんと家族にとっては、まさに「待ったなし」の状態です。
 といっても実際に未承認抗がんを使用する場合に、さまざまな情報を入手しなければなりません。
 どうしたらいいでしょうか。



「患者さんや医療関係者のネットワーク情報を集約した信頼できる医師へつなぐ」

取材協力:日本医療コーディネーター協会理事:芹澤浩美さん、高橋菜子さん

未承認抗がん剤に対するさまざまな照会に対して、積極的に応じている組織が「日本医療コーディネーター」です。看護師によって構成されている同協会の「医療コーディネーター」とは、医療サービスを提供する側(医療者)と医療サービスを受ける側(患者さん、ご家族を含めたすべての医療消費者)の間に立って、医療のさまざま面で「立場の違い」からできる隙間を埋め・架け橋を目指すものであり、その依頼には、再発進行がんの患者さんからの「未承認抗がん剤を使いたい」という要望も多いといいます。

■未承認抗がん剤という選択の目的

 がん患者さんにとって、これから治療が始まる「がんの宣告」よりも、「何も治療法がない」と告げられることの方が、どれほど辛いことか。そのショックの大きさは、計り知れません。そして仮に0.1%の確率でも、効果に対する期待が残されているのであれば、治療を続けたいという気持ちになるのは当然でしょう。しかし未承認薬は、決して“夢の薬”ではないのです。「まったく効果がなく、ただ大きな経済的負担を費やしているケースも珍しくない」との声が聞かれます。では未承認薬という選択肢には、何を求めることができるのでしょうか。
「一般の病院での治療が終わられた方で、治療の可能性を求め、そのなかの選択肢の一つである未承認薬の相談が多いのは確かです。初回面談時にクライアント(患者さん)さんから、現在までの治療経過や相談内容をお聞きするなかで、未承認薬を選択する場合には、自由診療であるため経済的負担が大きいことや、海外での臨床試験データしかないことをご説明します。そのうえで、信頼できる医師のセカンドオピニオンをご紹介することにしています」
 再発治療(遠隔転移)は、標準治療が確立されておらず、保険適応内の薬剤で効果が得られない場合には、『治療法がない』という表現になります。しかし、まだ日本にもがんの種別の枠を外した保険適応外薬品や未承認薬でも、上手に使用すればかなり症状改善をし、QOL(生活の質の向上)を保ちつつ、がんとの共存する期間を延長する効果が得られるものがあります」



■未承認抗がん剤を使用するうえで、
一番怖いのは情報に飛びついてしまうこと

 国公立病院や大きな病院では、基本的に標準的な治療(保険適応内)を方針とするところがほとんどなので、未承認薬を使用してくれる医師を探すのは、まず難しいといっていいでしょう。だからといって、使用してくれる医師なら誰でもいいというわけにはいかないのが実情です。未承認薬は、日本人に対する適切な投与データがないため、その扱いは慎重に行なわれなければなりません。未承認薬の使用を考えた場合、もっとも重要になるのは、患者個々の状態に合った治療をしてくれる医師とめぐり合えるかどうかなのです。
「海外の未承認薬に関しては、適切な情報が少ないために情報操作されてしまいがちで、それが一番危険です。実際に特有な副作用がでた場合、対処に困ってしまうケースもあるようです。そのため薬を熟知し、副作用対策や全身管理ができる医師のもとでの治療を受けていただきたいのです」


■ドクターとの相性も重要な要素

コーディネーション情報は、独自にもつパートナードクターや医療関係者などのネットワークにより収集し展開しています。また実際の医療現場の対応や未承認薬の使用方法、費用などを評価するうえで、大いに参考になっているのは、過去に対応した患者さんからの口コミや苦言など、生の声としてもたらされる情報だそうです。
「治療を行ううえで、ドクターとの相性や信頼関係はとても重要と考えます。どんなに評判の良い医師であっても、個々に相性が合うかは別ですので、一概に判断するのは難しいことです。患者の人生に伴走してくれる医師に出会ったときこそ、納得できる医療を受けることができるのではないでしょうか。医療コーディネーターは、クライアント(患者さん)のパートナーであると同時に、クライアントの信じた医師のパートナーにもなり得るのです」


●「日本医療コーディネーター協会(JPMCA)」(協会協力医:羽田正人医師)メモ●

 <公式HP>http://www.jpmca.net/

※ 次回は、実際に未承認抗がん剤を使用している医師を取り上げます。
【抗がん剤一覧・がんに対する標準治療薬並びに二次薬に関する情報】
 ★「がん情報サイト」 http://cancerinfo.tri-kobe.org/


『ちょっと待って!未承認薬に行く前にすべての治療法を検討しましたか』

取材協力:キャンサーネットジャパン理事・事務局長の柳澤昭浩さん

 NPO法人として過去10年にわたり、日本における「がん患者さん中心の医療」普及・啓蒙のため、主にインターネット上で、がん情報を専門に発信し続けてきたキャンサーネットジャパンでは、ボランティア医師がセカンドオピニオンとして外来診療(有料)とメール(無料)で、がん患者さんからの相談を受けています。
ただし、「科学的根拠に基づいた医療(EBM)」の普及・啓蒙を団体のミッションとしているため、まだ日本で承認されていない抗がん剤に関する質問や問合せは、基本的に受け付けていません。
米国の製薬会社で、抗がん剤を18年間扱ってきて、この2月から事務局長としてキャンサーネットジャパンに移籍した柳澤さんは、あまり表沙汰にされないがゆえ、安易に投与されている現在の未承認薬の使われ方について、例えそれが「治療法なし」と言われた再発進行がんであっても、「注意」が必要と指摘します。

■リスクを説明して投与しているのか・・・

「私の知り得た範囲の話では、未承認薬の投与量や投与間隔、併用されている薬などが、あまり知識・経験のない医師によって、きちんと安全性が担保されていないまま、安易に患者さんに投与されている状況もあるようです。いくら欧米で承認されている抗がん剤だからといっても、最近では人種間により投与量、効果・副作用も異なる薬剤があり、日本人にそのまま当てはめることができない場合があります。日本人に対する適切な用量の設定は、きちんと臨床試験で検証しないと分かりません。それがないまま未承認で使用されることの危険性を感じています。果たして、すべての未承認を使う医師は、それだけのリスクを説明して投与しているのかどうかは疑問です」


■有効性がはっきりしていても使われ方が問題

「なかには、すごくうまく未承認薬を使用している医師も確かにいるかもしれません。それに未承認薬といっても、なかには大変有益な領域もあって、例えば、腎がんに対する『スーテント』(一般名:スニチニブ)や『ソラフェニブ』といった薬を使うことで、利益を受ける患者さんもいると思います。
Her2陽性の再発・進行乳がんに対する『ラパチニブ』といった薬剤も、昨年の全米臨床腫瘍学会で素晴らしいデータが報告され、未承認ではありますが、期待されるものです。ですからオプションとして未承認を完全に否定するわけではなく、薬によってはケースバイケースだと思いますが、どれだけ安全性が担保されて使われるかどうかは、まったく別の問題であると思います」


■数多くある承認薬のオプションをすべて使い切っているのか

「有効な抗がん剤が少ない、がんの場合には、本当に未承認薬を使用したいと思う患者さんもいるかもしれません。未承認薬を使った方がいい、と思われるケースもあります。しかし大多数のがんに関して、現在は未承認薬を使わないと、どうしようもないというケースはあまりないと思います。たとえば乳がんを例に取れば、ここ数年、米国を含めて再発してからの生存期間は延びているようです。手術後にリンパ節転移があり、リスクが高いと思われ、CMF療法やAC療法が行われ、その後に再発したとしても、『タキサン系の薬剤』、『ゼローダ』や『ナベルビン』もあります。他にもHer2陽性の患者さんには、『ハーセプチン』というように、かなりのオプションがあるので、乳がんの患者さんが、もし未承認薬を希望するのであれば、承認されている数多くのオプションがないかどうかを確認する必要があります。非小細胞肺がんでも、『シスプラチン』、『カルボプラチン』、『タキサン系薬剤』、『ナベルビン』、『ジェムザール』、『イリノテカン』、『イレッサ』(米国では逆に未承認)など、科学的根拠を有し、承認されている複数の抗がん剤があります」
 大多数の進行・再発患者さんに、現在日本で承認されている治療や抗がん剤が、果たしてすべてオプションとして検討されているのか疑問です。もし検討もされずに『治療法がない』と、安易に未承認薬に走ってしまうようなことがあったら問題です。がん対策基本法が成立しましたが、今後、標準的治療の情報や治療自体が、きちんと提供され・実施されたかどうかということは、大変に重要な点になると思います。ですから医療者も非常に気をつけなくてはいけないし、患者さんもその点を十分確認してもらいたいと思います」


■センセーショナルな臨床試験結果でも冷静に

「未承認薬と一言でいっても、その治療成績はさまざまで、一概に全部否定することはできません。ただ未承認≠ニいう言葉に、患者さんがあまりにも希望を託してしまう、その状況は、やはりよくないと思います。こんな例があります。膵臓がんで承認されている『ジェムザール』という薬があります。この薬に、日本では未承認の『タルセバ』(エルロチニブ)という薬をプラスした臨床試験の結果が、米国の学会で報告されました。“生存期間中央値が延びた”ということで、それは報道でもセンセーショナルに取り上げられました。
 しかし、こういう結果を患者さんが知ったときは、冷静にみてもらいたいと思います。その結果は、生存期間中央値において、ジェムザール単独療法に比べ14日間のみの延長でした。治療成績が大変厳しい疾患ですので、統計的には少し改善するだけで、統計的な有意差がでる傾向にあります。しかし統計的な有意差と、患者さんが得られる真の利益とはまったく別の話です。
p値(危険率)から見る生存期間の有意な延長という臨床試験の結果は、医療者の興味であって、患者さんの利益とは合致しない場合があります。これは生存期間中央値ですので、実際には1か月、2か月延びる患者さんも中にはいるとは思います。しかし、月々数十万円近い金額がかかり、副作用等の安全性も担保されていない状況で投与されることもあり、冷静な判断も必要になってくるケースもあると思います」


●特定非営利活動法人「キャンサーネットジャパン」メモ●

 <公式HP> http://www.cancernet.jp/
 <公式ブログ> http://blogs.yahoo.co.jp/cancernet_japan
厚生労働省HP「がん対策基本法」http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan.html

<『週刊がん もっといい日』編集部から>

今回からスタートした連載『一刻も待てない、がん患者さんたちの苦悩』は、日々、編集部に寄せられる患者さんと家族の方々のためのシリーズです。「こんなことで困っている」「私が通っている医療機関では未承認抗がん剤に積極的に取り組んでいる」「こんな体験があった」等々。がん闘病生活を送られる、がん患者さんと家族が、「がん」と宣告された後、治療を続けてきたある日、「保険適用の抗がん剤では、これ以上の治療無理・・・と告げられたとき、どうすればいいでしょうか?」
本連載は、そのような患者さんや家族のための“羅針盤”となれば幸いです。
皆さまとともに、未承認抗がん剤問題を考えてゆきましょう。ご意見、ご投稿をお待ちしております。



第2回

連載A『一刻も待てない、がん患者さんたちの苦悩』

『もう治療法がない≠ニ言われた再発進行がんの未承認抗がん剤という選択肢』

<未承認抗がん剤:取材プロジェクトチーム>


■「未承認抗がん剤」とは?

「もう治療法(承認薬)がない」と告げられた再発進行がんの患者さんが、藁をもつかむ思いで本当に求めているのは、まだ改善の余地を残した使えるお薬≠ナす。この新連載のテーマとなっている「未承認抗がん剤」と、一言でいっても幅広く、大きく分けると次の3種類があるといえます。また現在、抗がん剤には二つのタイプがあります


【未承認抗がん剤(保険適応外薬)には3種類ある】

○海外では承認されているが日本では未承認の輸入抗がん剤
○承認されているが使えるがんの種類が限られる抗がん剤
○抗がん剤ではないが抗がん作用のある他疾患で承認されている薬


【抗がん剤は大きく二つのタイプに分けられる】

○従来型の抗がん剤(細胞毒性の抗がん剤)
がん細胞と正常細胞を区別しないで攻撃するので副作用が出やすい
○分子標的薬(新しいタイプの抗がん剤)
がん増殖に関わる分子のみを阻害するので効果が高く副作用が少ない

■抗がん剤の化学療法はパズルとサジ加減

再発進行がんに対する化学療法は抗がん剤(抗がん作用のある薬)を単剤で使って高い
効果が得られることはまず稀で、複数のお薬を組み合わせて行われます。ですから使える薬が多ければ多いほど、その組み合わせも増えて幾通りもの併用で、患者さんの状態に合わせながら効く組み合わせを次から次へと変えていくことができるわけです。また組み合わせだけでなく、それぞれのお薬の使う用量によっても効果や副作用の出かたが患者さんによって異なることがあります。
 抗がん剤の化学療法は、まさにパズルのような組み合わせと微妙なサジ加減で効果と副作用のバランスを慎重にみながら、その患者さんに合ったお薬を上手に探り当てていく作業になります。それだけ化学療法を行う医師には抗がん剤に対する豊富な知識と高い技術力が要求されるのです。



※   ※   ※
『サリドマイドの血管新生阻害作用で、がん細胞を兵糧攻めにする』


取材協力:羽田正人医師・薬剤師/『がんの相談室』東京クリニック

羽田医師
羽田医師はPCを使い、標準治療、国内にある未承認薬の組み合わせ、海外にある未承認薬の組み合わせを3段階に分けて患者さんに説明している。

※羽田医師のプロフィール

羽田正人(はだまさと)
1969年富山大学薬学部薬学学科卒業後、
東京田辺製薬営業部学術課入社。
77年広島大学医学部医学学科卒業後、
同大学麻酔学教室入局。
79年呉共済病院外科他。
83年愛鷹病院外科。
06年はだクリニックを開業し院長。
06年「がんの相談室」東京クリニック設立。

今回、取り上げる羽田正人医師は、『サリドマイド』を使ったがん治療の第一人者として知られ、副作用の少ない分子標的薬や経済的負担の少ない一般的な他疾患の承認薬を上手に併用し、多くの実績を残している未承認抗がん剤の使用経験が豊富な医師です。そのがん治療の現場を知れば、たとえ再発進行がんであっても、決して早々にあきらめることはないと勇気づけられると思います。

■ がん細胞だけをひどい目に合わせる『サリドマイド』

 羽田医師は、2000年頃からこれまでに国内未承認の『サリドマイド』を併用した化学療法を約500人の患者さんに行ってきている。この薬には、鎮静薬として服用した妊婦に、手足の形状異常の子供が生まれるという薬害の過去がつきまとうが、米国では、1999年良性疾患であるハンセン病の薬として発売された。羽田医師が、いち早くがん治療に広く使用してきたのは、それだけこの薬は強力で安全な「血管新生阻害作用」があるからだ。
「イメージが悪い薬ですが、なぜあれだけの忌まわしい薬害を引き起こしたのかを考えると、なぜがん治療に有効なのか分かりやすい。過去の薬害では、妊婦さんには副作用はなかったのです。ひどい目にあったのは、赤ちゃんです。飲んだ人にはほとんど副作用がなく、赤ちゃんの血管ができなかったから、ひどい目に合った。つまり、がん患者さんには副作用が少ないうえに、がんに行く血管を作らせないようにできる。がん細胞だけがひどい目に合うのです」


■経済的でがんの諸症状を起す因子を上手に抑える

 サリドマイドを中心に、羽田医師がよく使用する抗がん剤は、COX−2阻害剤の『セレブレックス』、『ゲムシタビン』(ジェムザール)、『-イリノテカン』、『ビノレルビン』(ナベルビン)、『シスプラチン』(CDDP)、『ソラフェニブ』(ネクサバール)など、多くても10種類ほどだ。

「副作用がなくてよく効くというのは、経済的なことを考えると、今のところ『サリドマイド』しかないでしょうね。輸入薬の血管新生抑制剤に『アバスチン』がありますが、月に何十万円(単剤価格)もかかる。また、いい薬だといわれていますが、穿孔と出血という重大な結果を招くような副作用もありますからね。それに『サリドマイド』は、がん自体のいろいろな諸症状を起す因子を結構上手に抑えてくれるのです」
○ 血管新生抑制作用のある『サリドマイド』

■医師が薬を使い慣れていないと危ない

 ほとんどが併用で使われるが、仮に単剤でみても『サイドマイド』の費用は、かかっても月に3万―6万円ほどだ。未承認抗がん剤の治療を望むにあたり、経済的な問題は大きいが、羽田医師を取材して、とくに痛感したのは、投与する医師がその薬を使い慣れていて上手な使い方を知らないと、効き目が悪いうえに危ない<Pースも多いということだ。
「たとえば腎臓がんに非常によく効いて、今、注目を浴びている『ネクサバール』という米国の分子標的薬があります。米国では1日800ミリ使うことになっていますが、実際、この用量を使うと血圧がすごく上がってしまうので危険なのです。しかし、この半分ぐらいの用量を、他の抗がん剤と組み合わせると、腫瘍が小さくなり非常にいい効果が得られます。だから未承認抗がん剤を扱うにしても、欧米の使用法がすべて正しいというわけでもない。副作用を上手に避けて、少しずつ慎重に手探りでやっていかなくてはいけない」
 他の例では、羽田医師は、これまで『サリドマイド』と『セレブレックス』の併用を、がん治療に取り入れてかなりの効果を得ている。米国でも、後に同じ組み合わせで臨床試験まですすめてきているが、米国の有名ながん雑誌「クリニカルキャンサーリサーチ」には、多発性骨髄腫に非常に効果的だが、最終結論として副作用が強くて使えないという文献が掲載されたという。その違いは何か。米国では羽田医師の3〜4倍の用量を使って行われているのだという。
「欧米で使われている抗がん剤を、あれこれとたくさん持ってきたところで、医師であっても、そんなにたくさん本当に使いこなせるものではありません。副作用や経済的負担を十分考えて、分子標的薬などのいい抗がん剤を、上手に工夫して併用していけば、再発進行がんでもかなり幅広く対応できるのです」

○骨粗しょう症薬『フォサマック』、糖尿病薬『アクトス』、抗けいれん薬『デパケン』なども抗がん剤として併用している。
■生活習慣病の薬にも抗がん作用がある

 抗がん剤の組み合わせ以外にも、羽田医師は、高血圧や糖尿病などの持病をもつ患者さんに、その疾病薬の中でも抗がん作用のある薬を、一緒に併用して抗がん治療の効果を高めている。
「がん患者さんで一番多い持病は、高血圧です。高血圧の人は、ACEという酵素が多く、これには血圧を上げる作用と血管新生作用がある。だから高血圧のがん患者さんのなかでも、ACE阻害剤を飲んでいる人の方が長生きするのです。高血圧のがん患者さんには、ACE阻害剤を併用していくわけです。
それに、がんで冬に手術した人と夏に手術した人の生存期間の統計があって、夏に手術した人の方が長生きをする。なぜかというと、夏は太陽の陽射しが強く、体内のビタミンD産生が活発になるので血中濃度が高くなっているからです。肺がんなどの患者さんには、通常の40倍ぐらいのビタミンDを併用して抗がん治療をします」
他にも糖尿病薬の『アクトス』は、細胞内のミトコンドリアのある部分に作用し、それががん細胞の自然死を招くのだという。また抗けいれん薬(抗てんかん薬)の『デパケン』は、細胞が分裂をするときに作用して、がん細胞の増殖に抑制作用が働くという。そして、これらの薬を羽田医師は、「これから一般的に抗がん剤として使われていくようになるだろう」とみている。


○患者さんに説明しやすいように診察室内の棚には使用している未承認薬が並ぶ
■2か月で腫瘍が完全に消えた例もある

 再発進行がんの患者さんの『サリドマイド』を併用した延命効果を、一概に生存期間で表すのは難しいが、すいがん肝転移がん性腹膜炎の患者さんで奏効したケースでは、1年4か月も元気に生活していたという。また現在、通院している糖尿病で乳がんの患者さんなどは、実際にすごくよくなってきている。
「現実、ファーストラインの治療を終えた患者さんが、セカンドラインの治療で効果を出すのは非常に難しいんです。しかし、『サリドマイド』治療でいえるのは、多少の差はあれ少なくとも症状の改善ができるということ。さらに効果が出ればがんを休眠状態に持ち込めることもある。なかには2か月で完全に腫瘍が消えた例もあるのです」

 そして、「もう治療法がない」といわれた再発進行がんに対する未承認抗がん剤の使用という選択肢について、羽田医師はこう話す。
「承認薬か未承認薬かは関係なく、何でも使えばいいと思います。ただし副作用が少なくなるように上手に組み合わせて、謙虚に使わなくてはいけない。標準治療というのは、今、承認されている薬を使って最大限の効果をあげましょうということで、個々の患者さんに当てはめてみれば、必ずしもベストの治療法を意味するものではない。実際に抗がん剤の奏効率といったら、30%もあったら非常にいいほうで、逆を言えば70%は効かないということです。だから、そのような画一した枠を取り払って、もっと別の方法を取り入れれば、用量が少なくて効果がよく副作用も少ない方法も見つけられますよ、ということです」


★『がんの相談室』東京クリニック

東京都中央区日本橋茅場町2−17−7 第三大倉ビル1F
TEL03−3669−4771 / FAX03−3669−4772

 <公式HP> http://www.gansoudan.com


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