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週刊がん もっといい日


もう迷わない!
がん治療を補うサプリメントの選び方



 いまやがん患者さんにとってサプリメントの利用はとても身近なものとなっている。2005年厚生労働省研究班の調べでは、診断後のサプリメント利用経験のある人は43%。実にがん患者さんの約2人に1人が利用していることになる。

 一般に"健康食品"と呼ばれるサプリメントをがん治療に役立たせようと思った場合、それは「補完代替(ほかんだいたい)医療」(左表参照)の1つとして位置づけられる。
 補完代替医療には、世界の伝統医学、ハーブ療法、ビタミン等のサプリメント、健康食品、アロマセラピー、食事療法、精神・心理療法、温泉療法、音楽療法など、通常、保険で行われる治療法以外のさまざまな療法が含まれる。しかし、その内容によっては病院で処方された医薬品との併用や長期の利用による危険性が指摘されるものもあり、がん患者さんとってどのような補完代替医療が安全性が高く、自分の治療にプラスになるのか判断するのがなかなか難しいのが現状だ。
 今回の特集では3回にわたり、補完代替医療の中でも最も利用率の高いサプリメント関連を中心に、国内ではまだ数少ない補完代替医療外来での取り組み、不安を解消するサプリメント選びのポイント、大手製薬会社が進めてきたサプリメント研究の実績などについて取り上げていきたい。



連載(1)
(11.1.15)
連載(2)
(11.1.21)
連載(3)
(11.1.28)




連載(1)

国立大学でも設置がすすむ「補完代替医療外来」



 わが国では、これまで大学医学部などでサプリメントなどの補完代替医療に関する教育がほとんど行われてこなかった。そのため、医療現場では患者さんやその家族からサプリメントなどの相談を受けたときに、医師が適切なアドバイスができない状態が長年続いていた。  
 それが近年、日本補完代替医療学会が設立され、所属する医師らの尽力もあり、最近では補完代替医療を専門に研究する研究室が金沢大学や大阪大学などの国立大学でも設置され、科学的な検証が進められるようになってきた。それに伴い実際に患者さんの相談を受け付ける外来も設けられている。  
 今回、金沢大学附属病院(石川県金沢市)と芳珠記念病院(石川県能美市)で補完代替医療外来を担当する金沢大学大学院医学系研究科・臨床研究開発補完代替医療学講座 特任教授の鈴木信孝医師に外来や臨床試験での取り組みについて聞いた。


鈴木信孝医師
1981年防衛医科大学校卒業後、金沢大学医学部産婦人科に入局。1994年金沢大学医学系研究科講師。2004年金沢大学医学系研究科補完代替医療学講座 特任教授。2007年金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座 特任教授。(2001年〜現在 日本補完代替医療学会理事長) 専門:各種機能性食品、植物性医薬品の臨床研究
幅広い相談に時間をかけ対応

 金沢大学附属病院、芳珠記念病院ともに補完代替医療外来が本格的に設置されたのは2007年からだ。  
 金沢大学附属病院では通院・入院の院内患者さんのみを主な対象に相談(無料)に応じている。一方、芳珠記念病院では一般の専門外来として院内患者さん以外の人からの相談(有料・完全予約制)も受け付けている。
 「やはり一番多いのはサプリメントに関わる相談で、自分が飲んでいるサプリメントの安全性はどうか、いま常用しているお薬との飲み合わせはどうか、それから何種類ものサプリメントを飲んでいる人もいますから、こんなにたくさんの種類をいっぺんに飲んでいいのかなど、内容は本当にさまざまです」
 その他には、アロマセラピーや鍼灸、柔道整復といった補完代替医療をこの時期にどうやって受けたらいいのかなど。補完代替医療の全般にわたって幅広い相談が持ち込まれるので、その日に答えが出ない場合には後日調べて答えを伝えるというケースが全体の3分の1ぐらいあるという。
 「ただ、患者さんもよく勉強をしていて、場合によっては我々よりも知識が豊富で逆に患者さんから関係資料を提出してもらえるような場合には、それを医学的に判断することがとても重要になってくる。患者さんは何を根拠に、この代替医療を始めたのか、始めようとしているのかという、その根拠となっている論文などを精査することもやっています」

 芳珠記念病院の補完代替医療外来は、鈴木医師をはじめ3名の医師が非常勤で担当しており、第1・3木曜日の午後を診療の時間に当てている。相談の対応には1人早くても30〜40分、長ければ1時間ぐらいかかるので、完全予約制で1日数名程度(多くて10名)に限定して受け付けているのが現状だ。

      
           患者さんと対面している鈴木医師→

同じ食品原料でも最終素材は別物に


 補完代替医療外来では、必要があれば飲んでいるサプリメントを持参してもらうこともあるという。
  「その食品、とくにサプリメントでいえば、一般の素材についてはみなさん知っているのですが、最終素材についてどれだけデータがあるのかということは意外とみなさんご存じないようです。やはり最終素材のデータでどれだけ安全性があるのか、有用性があるのかが一番大事なのです」
 最終素材とは、同じ食品素材(原料)でも加工後、製品化された素材のことを指す。しかも、それ以前に同じ名称の食品素材でもかなり違いがある場合があるという。
 「たとえば原料がシイタケの菌糸体であれば、シイタケの菌糸体にもたくさんの種類があるわけです。その内のどの株を使っているのかというところまで突き詰めれば、同じシイタケの菌糸体で作られていても、まったく違った安全性、有効性をもつサプリメントになっている可能性もあるわけです」
 実際に漢方薬などでもその素材を分析してみると、ある場所で採れた生薬と別の場所で採れた生薬では、育つ土壌の違いによって同じ生薬でも含有する有効成分がまったく違って10分の1ということもあるという。
        芳珠記念病院の外観(上
        病院の玄関ネームプレート(下)
 それが加工後の最終素材となると、サプリメントの製造会社がどこのどんな素材を使って、煮ているのか直接加熱しているのかでも違う。有効成分の抽出方法でもアルコールで抽出する場合もあれば、水で抽出している場合もある。「同じ原料で作られているサプリメントでも最終素材はほとんど別物といってもいいぐらい違う」と説明する。
 そして、米国ではサプリメントのような食品(最終素材)の臨床試験をする場合には、基本的に有効成分が何%以上含有している原料を使っているのかというデータをきちんと出さなければ臨床医は取り合ってくれないという(正確なデータが取れない)。  「だからこそ、その企業が最終的に自分たちが作った素材で微力ながらもコツコツと必要とされる安全性試験、有効性試験を積んでいくということがいかに重要かということになるのです」


サプリメントにも臨床試験による検証を

 金沢大学附属病院や芳珠記念病院では、外来とは別に(サプリメント・メーカーなどの依頼に応じて)サプリメントなどの補完代替医療の臨床試験を実施して科学的な検証を行う窓口を設けているところも大きな特徴だ。

 サプリメントはあくまで食品なので、食品衛生法上で製造され、特定保健用食品以外のサプリメントではどこまで安全性試験を実施するかの決まりはない。開発費がかかることもあり、有効性に関しても動物実験までは行ってもヒトへの臨床試験を行っているサプリメントはまだまだ少ない。また、そもそもサプリメント(食品)の有効性に関心をもち臨床試験に協力してくれる臨床医も医療施設もこれまで非常に少なかったのが現状だ。


                         検査室→

 「たとえば、がんに対する有効性にしても、臨床試験をしていないから証拠がないということで西洋現代医学ではそれを使うことはできませんといいますが、逆を返すとこの領域はもっと臨床の先生が自ら検証していかないと何も進展しない。サプリメント(食品)というのは農学部の先生方が中心になって開発されたものですから、そこまでで分断されていたのです。医学、農学、薬学と、いわゆる証拠を作るための連携がとれていなかったというのが、これまでの現状なのです。今後は臨床医も補完代替医療の未知なる可能性に目を向けて証拠作りに参加していけば、まだ有効性がはっきりしてくる食品素材は山ほどあると思います」
 米国では、日本と同じようにサプリメントや機能性食品を利用する患者さんが非常に多いという現状があることから、国立衛生研究所内に補完代替医療センターを設立し、年間130億円という巨大な予算を投じて、国を挙げてその検証作業を始めている。 
 日本では、日本補完代替医療学会が中心となり、少しずつだが医学、農学、薬学、工学などの研究者たちの連携が始まったばかりだ。
 日本補完代替医療学会の理事長でもある鈴木先生は、今後の補完代替医療への取り組みについて展望をこう話す。
 「やはり外来は目の前の患者さんしか診られませんから、今後はサプリメント(食品)であれば最終素材の正確な情報をいかに内外にきちんと発信していくかということが我々の大きな役目だと思っています。
 ウィキペディア(ネット上の百科事典)は確かにいいインターネットサービスですが、それが正確かどうか保証するものではありません。健康情報はあまり間違っていては困るので、何らかの審査制を引いた健康情報サイトの構築を急いでいます」
 鈴木医師らが関わり立ち上げる補完代替医療の健康情報サイトは産学連携の共同体が運営窓口になることが決まっており、会員制サイトとして今春早々にもネット上に開設させる予定だという。

 次回は、第13回日本補完代替医療学会学術集会で、市民公開セミナーとして鈴木医師が講演された「がん患者さんのサプリメントとの上手な付き合い方」の話をもとに、サプリメント選びのポイントを取り上げる。

医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院(石川県能美市)
問い合わせ先・・・0761-51-5551(代)/内科外来

<<補完代替医療外来を設置している大学(例)1>>
●金沢大学附属病院補完代替医療外来
●大阪大学医学部附属病院補完代替医療外来
●徳島大学病院補完代替医療法室
●東京女子医大附属青山自然医療研究所クリニック





連載(2)

がん患者さんのサプリメント(健康食品)選びのポイント



 がん患者さんがサプリメントを安心して治療に役立てたいと思ったとき、いったいどんな点に注意して商品選びをすればいいのか?昨年12月、帝京平成大学池袋校(東京)で「第13回日本補完代替医療学会学術集会」が開催された。
 そこで設けられた市民公開セミナー「がん患者さんのサプリメントとの上手な付き合い方」で、講師を務めた金沢大学大学院医学系研究科・臨床研究開発補完代替医療学講座の鈴木信孝特任教授が、がん患者さんのサプリメント選びのポイントについて解説している。あらためて紹介しておきたい。

講演中の鈴木医師 学術集会入り口           会場内の様子


[三大情報を読み解く]

 2005年、厚生労働省研究班の調べで、がん患者さんの2人に1人がサプリメントを利用していることがわかり、その目的で圧倒的に多いのが「がんの進行抑制」だ。しかし、食品は病気に対する効能を謳うことが禁止されているため、患者さんは商品に添付された、限られた情報のなかから、本当に自分の目的に沿ったサプリメントなのかどうか、自ら勉強をしながら判断するしかないのが現状だ。


 そこで鈴木医師は、サプリメントを選ぶときのポイントとして、大きく「安全性」「ヒト臨床」「作用」の3つをあげている。そして最も重要と指摘するのは「安全性」だ。

<安全性>
●《販売期間が長い、素材(原料)に馴染みがある》
「商品に問題があればすぐ分かるので、販売の経験が長ければ長いほど安全といえます。また、馴染みのある食品由来の成分やサプリメントとしての使用実績が長い素材のものから選ばれるのが良いでしょう」
●《品質管理されている》
「きちんと管理された製造工程かどうか知ることも大切です」
●《安全性試験が充実している》
「サプリメント類のなかで国が安全性を審査するものとして『特定保健用食品』というものがありますが、それ以外のサプリメントでは、どこまで安全性試験を実施するかの決まりはありません。メーカーにどこまで安全試験を実施しているかを問い合わせることで、そのメーカーの安全性に対する姿勢を知ることができるでしょう」

●《お薬への影響がわかっている》
「お薬に影響を与える食品で、みなさんがよくご存じなのはグレープフルーツでしょう。グレープフルーツの実の皮の部分には、お薬を分解する酵素の働きを弱める成分があって、一緒に摂るとお薬が分解・排泄されないので、必要以上にお薬が効いてしまうために、体に害を及ぼす可能性があるのです。このようなお薬への影響がきちんと論文としてまとめてあって、医師が判断できるのが一番いいのですが、なかなか検証が遅れている分野でもあります」
「ですから、検証がされていない場合は、馴染みのない原料を使ったサプリの利用は避ける、投薬中のサプリの利用は避ける、といった姿勢も大切です」

<ヒト臨床>

●《ヒト臨床試験が実施してあるものが望ましい》
「確かに"ヒト臨床試験"まで実施してある方が望ましいが、開発コストの関係などから臨床試験まできちんと実施しているサプリメントはまだ少数です。ですから、現段階では臨床データがなくて当然の状況で、これから臨床データをそろえたサプリメントが増えてくるでしょう」

 また、たとえ臨床試験が記載されていたとしても、それが本当に信頼できるデータなのかきちんと確認することが大切だ。 「あまり宣伝文句がなくて、研究データがたんたんと記載されてあって、その研究データも出典元はどこなのか、誰がいつどこで研究したのか、これらがきちんと記載されているものが比較的信頼できる製品だと判断するのがいいと思います」
「信頼できない例」と「比較的信頼できる例」

<作用>
 がんの治療ステージはいろいろなケースに分けられるが、サプリメントの使用は未病の状態も含めて各ステージに合わせて考えていくことになる。

《手術予定の患者さん》
「手術をすると体力や免疫機能が低下し、手術後の感染症のリスクが高まるので、体力や免疫機能を高めてくれるサプリメントがいいでしょう」

《抗がん剤・放射線治療中の患者さん》
「やはり副作用をできるだけ抑えて、できるだけ長く治療を継続できることが大切になります。ですから副作用を抑える研究報告のあるもの、免疫機能の維持をポイントに用いることです」

《乳がんの術後ホルモン療法中の患者さん》
「女性ホルモンを抑えるような薬を使いますから、どうしても更年期症状が出やすくなります。更年期症状を改善したり、免疫機能を回復するようなサプリメントを使うことになります」

《病院での治療が終了した患者さん》
「手術など、治療によってダメージを受けているので、治療後の諸症状を緩和するようなもの。また、がんの再発に注意しなくてはいけないので、日々の免疫機能を維持することが大切になります」

《緩和医療期の患者さん》
「がんに直接アプローチするものよりも生活の質を良くするようなサプリメントに切り替わります。『生活の質』『人生の質』『生命の質』の3つを合わせて『QOL』といいますが、緩和医療期の患者さんには食欲不振を改善するもの、痛み、不眠、便通、不安などを改善するものの方がQOLを上げて、人生の生きる意味をきちんと持てるようになると思います」

 また、患者さんから「サプリメントは値段が高い方が効くのか、安いと効かないのか」といった質問をよくされるという。 「研究費をたくさんかけたものは加算されますので高くなります。しかし、それほど研究費をかけていないのに最初から高価なサプリメントもある。高いから効くというわけでもないし、安いから効かないというわけでもない。ですから、あまり値段にはとらわれず、1つ1つ理詰めでデータを頭に入れて判断するのが一番賢いサプリメントの選び方だと思います」

[サプリメントは本当に効くのか?]

 鈴木医師らは現在、シイタケの菌糸体を素材に使ったサプリメントを、乳がんの術後ホルモン療法を行っている患者さんに飲んでもらって免疫機能の改善作用と安全性を確かめる臨床試験を実施しており、まもなく結果データが出るという。
 そのような経緯があって、鈴木医師は患者さんからよく質問される「食品はがんに効くのですか?」という素朴な疑問に、このシイタケ菌糸体のことを実例にあげて答えているという。

 「わたしたちが普段、シイタケを食べる子実体という部分は、実は『レンチナン』という抗がん剤(承認薬)に使われているのです。レンチナンは胃がんで使われるテガフールという抗がん剤と一緒に併用すると5年生存率が有意に延びることが分かっています」

 そして、実はわたしたちが普段食べないシイタケ菌糸体も、小林製薬などが15年以上も研究を続けてきており、「その間、数多くの大学病院を中心とする研究機関も研究を進めていて、臨床試験でも免疫力を高めることでがん治療の補助に使えることがわかっている」という。
 このシイタケ菌糸体を使ったサプリメントは、特定保健用食品の標準的な安全試験が実施され、すでに販売されている。現在、行っているホルモン療法中の臨床試験以外にも、がんに対するさまざまなケースでの臨床試験が実施されている。

 山口大学が実施したリンパ節転移陽性の乳がん術後患者での術後化学療法の臨床試験(10例)では、通常では抗がん剤単独ではがんを攻撃するNK活性が低下するが、シイタケ菌糸体を併用するとNK活性の低下が抑えられ、QOLの低下も防げることが報告されている。
 広島大学が実施した胃がん、大腸がん、食道がん、乳がんの抗がん剤治療の患者さんへの臨床試験(7例)では、シイタケ菌糸体を併用するとNK活性とQOLが上昇するという結果が報告されている。

 「このようなことは補完代替医療に関わっている我々は知っているのですが、もっと現場の臨床医の先生方が知っていただくと、目の前の患者さんの質問にお答えできるのではないかと思っております。この学術集会も、そういうことを発表する場を提供させていただいているのです」

 ちなみにシイタケ菌糸体の研究成果がけいさいされている
 シイタケ菌糸体研究会のサイトはこちらをクリックして下さい

 最終回は、現在のサプリメント成分の研究がされている最先端の現場では、どのような研究が進められているのか、どのような品質管理が行われているのか、実際に大手メーカーの研究所を訪問してレポートしたい。

医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院(石川県能美市)
問い合わせ先・・・0761-51-5551(代)/内科外来

<<補完代替医療外来を設置している大学(例)1>>
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●大阪大学医学部附属病院補完代替医療外来
●徳島大学病院補完代替医療法室
●東京女子医大附属青山自然医療研究所クリニック





連載(3)

免疫が無力化する!? がんと免疫の最新研究



取材協力:小林製薬・中央研究所

 ひと言で「サプリメント(食品)」といっても、本当に信頼のおけるサプリメント素材の研究開発には医療分野に匹敵するほどのハイレベルの科学技術と膨大なコスト(時間や費用)がかけられていることはあまり知られていない。今回、大手メーカーに協力してもらい、一般にはふだん目に触れることのできない最先端の研究現場で行われている研究内容、品質管理等についてレポートする。(取材・文/医療ライター・新井貴)

【臨床医を納得させる絶対的な自信】

 小林製薬(本社・大阪市)が大阪府茨木市にもつ中央研究所は、同社の研究・技術開発の部門を担う、いわば"ものづくり"の中枢部だ。そのなかでも研究部は、自前のシーズ(新しい試み・技術)を開発する部署で、「食品成分とがん免疫」の研究を担当する"免疫研究グループ"は、免疫を高めるサプリメントの素材として"シイタケ菌糸体"に着目し、15年ほど前から研究をスタートさせている。

小林製薬中央研究所の外観 安全キャビネット内で細胞を培養

 連載第1回の記事で金沢大学大学院の鈴木信孝教授が指摘しているように、サプリメントは素材の均一した安全性、有用性を保証するメーカー側の品質管理が重要になってくる。では同社の場合は、どのように品質の均一性を保っているのか。
 免疫研究グループの為定誠課長は、「シイタケの菌糸体の場合も当然、菌株が違ってくれば有用成分にも違いが出てきます。ですから、使われる素材は常に選び抜かれた1つの菌株を元に作られています。この菌株選びは約2年かけて数千株の中からスクリーニングをかけ、最終的にもっとも優秀なデータが得られた菌株です。まったく同一の菌株は他には存在しませんから、厳重に保管されているおおもとの菌株は、弊社ブランドのシイタケ菌ということになります」と説明する。


小林製薬研究所・免疫研究グループ
為定 誠課長(学術博士)

 安全性試験に対しても、コスト面などからヒト臨床試験まで実施していないサプリメント素材が存在する現状のなかで、同社のシイタケ菌糸体の素材は、特定保健用食品(トクホ)の申請で標準的な安全性試験をすべて実施しているほどの念の入れようだ。

『特定保健用食品申請に必要な標準的な安全性試験』
免疫細胞の種類や量を測定

 為定課長は、「人が口から摂取する成分なので安全性が一番大事」と強調し、「この品質と安全性に"絶対的な自信がある"という大前提がベースにあるからこそ、有用性に対するヒト臨床試験にも積極的に可能性を追求してこれたのです」と話す。
 研究に終わりはなく、同社のシイタケ菌糸体の素材は、これまで多くの臨床医の協力・指導のもと、コストをかけて次々とがんに対する臨床研究の結果を報告・集積してきた(詳しい内容はhttp://www.ganmen-kobayashi.jp/index.htmlに掲示)。これだけ臨床医の協力を得ることができるのも、長年の研究の実績と揺るぎない臨床医を納得させるだけの品質と安全性のデータを提示することを地道に行ってきた賜物ともいえるわけだ。

【がん患者さんの体内に免疫を無力化させてしまう細胞がある】

 小林製薬の免疫研究グループは、これまでの「食品成分とがん免疫」の研究過程において、がんに対する食品成分の有用性を確認する新しいがん免疫の評価方法を開発した。
 その評価法を用いて(財)大阪癌研究会との共同研究でシイタケ菌糸体のがん再発予防に対する有用性を調べたところ、その有用性が確認でき、その結果は2009年米国癌学会100周年記念大会(コロラド州デンバー)で発表報告されている。

 「これまで、がんの免疫治療分野を中心に、がん患者さんに対して免疫を高めることばかりを考えていたわけです。しかし、実は、がん患者さんの体のなかでは、免疫を無力化させる細胞(制御性T細胞)が、がんにより増殖していることが分かってきました。その状態では、単に免疫を高めるだけでは、免疫が抑制されてしまうため、がん細胞を十分に攻撃できないのです。そのため、この制御性T細胞の働きを抑えて、がん細胞を攻撃できる体の状態にすることが重要だということが分かってきました。この新しい評価方法は"制御性T細胞の減少効果"を測る、優れたがん免疫の評価法なのです」(為定課長)

培養した細胞の繁殖状態を
チェック


 このような近年の研究によって、従来の手術・抗がん剤・放射線療法だけでなく、とくに新たながん治療法として注目を集めている免疫療法では、その効果を高めるために"いかに制御性T細胞を減少させられるか"の方法の開発が医薬・食品メーカーの大きな課題として活発に研究が行われている。

 小林製薬・中央研究所の免疫研究グループでは、これまでの新しい評価法の研究データの集積を活かして、島根大学医学部(免疫学の原田守教授)との共同研究により、いち早く、シイタケ菌糸体が制御性T細胞を減少させることを確認している。(2010年3月に開催された日本薬学会第130年会(岡山市)で発表)。

 さらに、2010年12月には第23回日本バイオセラピィ学会(大阪市)において、同じく島根大学医学部(同教授)との共同研究(マウス実験)によって、シイタケ菌糸体が「がんペプチドワクチン療法」(免疫療法の一種で、2010年から一部、高度先進医療に認定)の効果を増強させることを確認した成果を発表するまでに至っている。

 為定課長は免疫研究グループが果たしている役割について、「我々は食品の成分研究だけでなく、『免疫とは何か』という部分を最大のテーマとして長年研究を続けてきました。だから素材の作用メカニズムを科学的にはっきりと説明することができる。これが弊社の素材の特徴であり、強みだと思っています」とアピールする。

日本バイオセラピィ学会の発表会場


試薬反応を確認
 今回、サプリメントの素材を世に送り出す最先端の研究現場を読者に知ってもらうために、小林製薬・中央研究所を1つのモデルとして取り上げさせてもらったが、実際にはこれほどコストをかけて素材の研究に取り組んでいるメーカーは、一体どのくらい存在するだろうか。
 これから、サプリメントが補完代替医療の中核として1つでも多くの良質の素材が、がん治療の効果を高める方法として科学的にも解明され、広く認知されていくには、各メーカーの地道な研究と臨床医の協力なしでは進展は望めない。
  がん患者さんたちの治療の選択肢を少しでも広げるためにも、国内の補完代替医療の発展を願いながら業界の今後の動向に大いに注目していきたい。(最終回)


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