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『週刊がん もっといい日』編集部(株式会社日本医療情報出版)
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週刊がん もっといい日

“遺伝子レベル”で進められている世界のがん研究ですが、日本でも「遺伝子による診断・治療」が、近年、脚光を浴びています。そこで『週刊がん もっといい日』編集部では、がん遺伝子専門医療機関を訪ね、「がん遺伝子診断・治療」が、なぜ今注目されているのかお聞きしました。全4回、「遺伝子療法最前線」をお届けいたします。

遺伝子療法最前線

No.01
(10.8.6)
No.02
(10.8.13)
No.03
(10.8.20)
No.04
(10.8.27)


遺伝子療法最前線―(4)

「がん撲滅に向けた遺伝子診断・治療の方向性」


取材協力:UDXヒラハタクリニック


がんの最先端治療が一般に普及していくにあたって、どうしても課題となるのが高額な医療費の問題である。また、完全なオーダーメイド治療である「がん遺伝子診断・治療」ともなれば、正確な遺伝子診断から薬剤の作成までの一貫した遺伝子分野の知識が実際に治療にあたる臨床医師に求められてくる。がん遺伝子治療の今後の課題と方向性について、UDXヒラハタクリニック(東京・秋葉原)の平畑徹幸院長に聞いた。

平畑院長
【課題は1クール約800万円の高額な費用】

 平畑院長は、当院のがん遺伝子診断・治療のシステムについて、「いまのところ遺伝子レベルの治療では、これ以上の方法はない。製剤をいかに安く大量に作れるか、それが現時点での課題です」と話す。
 現在の当院の治療にかかる費用の目安は、このような内容だ。

【表1】 《がん遺伝子診断と治療にかかる費用の目安(1クール)》
内容 費用(税別)
●がん遺伝子診断             
 (113項目に及ぶがん遺伝子過剰発現、
がん抑制遺伝子変異、メチル化などの検出)
50万円
●DNAワクチン、サイトカイン遺伝子   
 治療―各6回             
DNAワクチン:30万円×6回
サイトカイン:20万円×6回
●スーパーNK細胞12回、スーパー
樹状細胞治療2〜6回        
スーパーNK細胞:12.5万円×12回
樹状細胞ワクチン:25万円×2〜6回
(採血前の白血球増加因子2回注射は約8万円の別途費用が必要)
●p53+FUS−1+IL−24+TRAIL    
 遺伝子カクテル治療
50万円×6回

※上記以外の分子標的治療薬などの遺伝子治療に関係のない治療は、別途料金が必要。


【スクリーニング検査を健康管理に役立たせる】

 平畑院長は、「遺伝子診断にしても遺伝子治療にしても、患者さんがどこまで望むか。その内容に合わせてある程度は治療費を抑えることはできる」と、こう説明する。
「たとえば中には遺伝子治療は受けるつもりはないが、遺伝子診断を自分の健康管理にため、再発予防にために役立てたという人もいる。その場合、当院ではスクリーング検査(10万円前後)もやっているので90%ぐらいの確率でリスクが分かる。それで1項目でも異常があればフル項目の遺伝子診断を受ければいいのです」
治療では、1クールでよくなった状態をそのまま維持していく方法もあるという。
「遺伝子診断に合わせた分子標的治療薬と低用量の抗がん剤を使いながら、当院で作成したp53を少量ずつうまく使っていけば費用的には安く続けられます」
 逆に極端なことをいえば、完全オーダーメイド治療のがん遺伝子治療では、「費用さえ考えなければ、どんながんでも治る時代を迎えてきている」という。
 ちなみにメキシコとバハマに診療所を開設し、米国人を対象に遺伝子治療を行っているムーン医師の施設では、1クールにかかる費用は1000万円。それでも毎月20〜30人の新規患者が来院し、待ちの患者さんが100人単位でいるという。



【将来的には筋肉注射で
がんの進行を阻止】



 遺伝子診断・治療の費用的な課題に対して、平畑院長は将来的に保険診療を目指している。
「がん遺伝子治療の領域のどこかで保険診療の風穴を開けなくてはいけないので、まずはワクチンで認可を取ろうと思っています。いま当院は東京医科歯科大学とタイアップして共同研究をはじめている分野があるので、認可取得に関しても協力し合って進めていけたらと考えています」
ヒラハタクリニック内の遺伝子ラボ


 また、遺伝子診断・治療を普及させるためにも平畑院長は昨年からドクター向けのセミナーの開催もはじめている。ただ、現状のシステムでは大がかりな設備や数多くの遺伝子関連の製剤を作成する必要があるため、一般の小規模医療施設での導入は現実的には難しい。
 平畑院長は「遺伝子のRNA(リボ核酸)にアプローチする、がん治療の領域が国内外の研究機関で進められている。当院も将来的には、もっと簡単に『筋肉注射だけでがんの進行が止まる』という領域まで遺伝子治療を進歩させていきたい」と今後の抱負を語る。

UDXヒラカタクリニックが入る
秋葉原UDX外観
 ムーン医師と平畑院長が、これまで臨床現場で実用してきた遺伝子診断・治療は、今後、米国三大ホスピタルの一つであるメイヨークリニックで採用することが決定し、まもなく臨床試験が開始される予定だという。




遺伝子療法最前線―(3)

『V期でもがん消失60%以上の遺伝子治療の奏効率』


取材協力:UDXヒラハタクリニック


世界各国でがん遺伝子関連の研究が急ピッチで進められているが、実際、「がん遺伝子診断・治療」が臨床現場で広く実用されるにはまだまだ年月が必要だ。しかし、“細胞レベルの治療”から“遺伝子レベルの治療”への変換によって、多くのがん患者さんが救われる時代を迎えることは間違いない。世界でもがん遺伝子治療をリードする「UDXヒラハタクリニック」(東京・秋葉原)の奏効率を検討する。

平畑院長
【W期でも半数以上は進行止まる】

 UDXヒラハタクリニックの平畑徹幸院長が、これまで「がん遺伝子診断・治療」を行った臨床例数は約100例。そのうち2008年10月から10年5月までの約50例の奏効率データが〈表1〉だ。
 見て分かるように、V期では「完全寛解(がんの徴候が全て消失)」が62%、進行例は1例もみられない。W期でも進行が止まる「安定」以上が57%を占める驚きの成績だ。
 平畑院長は「T期は100%治ります。たとえW期であっても、治療を3クール、4クール、5クールとやっていけば10%近くは完全寛解する可能性がある。末期の卵巣がんで余命2ヶ月と宣告された人でも治った症例がある」と話す。

 また、米国人(白人と黒人)を対象に4000例以上の遺伝子診断、1000例以上の遺伝子治療を行ってきたムーン医師(平畑院長が遺伝子診断・治療を学んだ元韓国中央大学教授)の奏効率になると、W期でも「部分寛解」以上が80%以上に達するという。これは、米国人は遺伝子的に使える抗がん剤の容量がアジア人より多いことが奏功率の違いに現れているという。

<表1>
           《病期別の治療成績》
         2008年10月〜2010年5月までの約50症例


CR(完全寛解) PR(部分寛解) SD(安定) PD(進行)
T期 100% 0% 0% 0%
U期 - - - -
V期 62% 23% 15% 0%
W期 9% 22% 26% 43%

※データ収集期間中にU期の患者さん無し


【「もっと早く知っておけば…」の
患者さんの声】

 まだ「がん遺伝子診断・治療」は認知度が低いため、当院を受診するがん患者さんの治療開始のタイミングがどうしても遅くなってしまうのが現状だ。
 平畑院長は「がん発見後、すぐ来てもらえれば非常に治りやすいのだが…」といい、「それでもあきらめないで欲しい」と、こう話す。
 「長野県に住む小細胞がんの男性で愛知がんセンターを受診する前に当院に治療の話を聞きに来たのですが、縦隔転移がたくさんあった。それで後日、やはり愛知がんセンターでは転移を消せないということで当院の遺伝子治療を受けたのですが、この患者さんのケースでは2ヶ月で転移はほとんど消えました」
 遺伝子治療を受けたほとんどの患者さんから聞かれる声は、「こうなる前にもっと早く知っておけばよかった」という言葉だという。
遺伝子治療「画像をみる平畑院長」

(別項)
《UDXヒラハタクリニックでの「がん遺伝子診断・治療」の症例》
◆乳がん(47歳・女性)
 左胸にシコリを触知したため、近医を受診したが手術以外の治療を希望し、当院を受診。遺伝子診断の結果、p53の変異、サイトケラチン−7、20、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)などの過剰発現が認められ、これらの遺伝子異常をターゲットにして治療を構築する。
 遺伝子異常は5個と少ないが、VEGF、VEGFRなどが発現しているため、がんのポテンシャルは高い。しかし、本人の希望により分子標的治療薬は使用せず、遺伝子治療のみを行うことを決定した。
 治療内容は、まず、白血球分離を行い、スーパーNK細胞を培養12回分、遺伝子情報に基づく樹状細胞ワクチン2回分、DNAワクチン6回分、サイトカイン6回分を作成。また、最も大切ながん抑制遺伝子のカクテル5回分を作成し治療を開始した。
 第1回のp53などのがん抑制遺伝子カクテルの点滴治療後、1週間で腫瘍の軟化が起こる。第2回、第3回と治療を進めて行くに従って、腫瘍の軟化と空洞化が進んで行き、エコー画像では腫瘍の嚢胞様に変化していることが確認できた。
 さらに完全を期するために、腫瘍内へ高濃度のp53を直接注入した結果、単なる血液成分のみとなり、腫瘍は完全に嚢胞化した。穿刺細胞診をしたが、がん細胞は認められていない。
◆卵巣がん(46歳・女性)
 余命2ヶ月を宣告され来院。多嚢胞性卵巣がんで、こぶし大の腫瘍が数個あり、腹水も大量に貯留していた。まず、腹水を抜くことから治療を開始。遺伝子診断を行い、腹腔内にp53のがん抑制遺伝子カクテルを注入。この治療を繰り返し、3クール終了時には、数個あったがんが縮小し、残り1個となった。
 最後のがんは強い皮膜で覆われており、同じ治療ではがんを溶かすことができないと判断。本人の希望により韓国のがんセンターでサイバーナイフを施行し、がんはすべて寛解した。


【最初の1クールで一気にがんの勢いを阻止】


 何クール治療を行うかは、その人の状態によって回数が違ってくるが、やはり最初の1回目の治療が“勝負”になるという。
 「最初にドーンと叩いてがんの勢いを抑えることが非常に重要。つまりp53(がん抑制遺伝子)が変異していると抗がん剤が効かない。p53を大量に使ったカクテル療法で、その性質を変えてやることで、薬剤がたくさん選択できるようになる。また、免疫ワクチンを使うことでもがん細胞の性質がよくなってくる」(平畑院長)
 1クールごとに遺伝子診断を行い、がんの性質が改善されているか確認。そのデータを基に2クール目の治療の組み合わせを決めていき、がんと闘っていくのだ。

次回は、「がん遺伝子診断・治療」の今後の課題と将来の方向性について取り上げたい。




遺伝子療法最前線―(2)

『遺伝子診断の情報を基に行う
オーダーメイドの遺伝子治療』


取材協力:UDXヒラハタクリニック


遺伝子の病気である“がん”を超早期に発見して治療することができる「がん遺伝子診断・治療」。将来、がん治療の中心になる療法として期待されているが、現時点では、どのように治療が行われているのか。国内で唯一、一貫したがん遺伝子の診断と治療を行っている専門医療機関「UDXヒラハタクリニック」(東京・秋葉原)の治療内容を紹介する。


【どんながんでも見つけて治す
オーダーメイド治療】

 がんの遺伝子治療は、あくまで前回紹介した“がん遺伝子診断”の結果データに基づいて行われる。個々の患者さんのターゲットとなるがん遺伝子を特定して、そのがんを治療するための薬剤を作るので完全なオーダーメイド治療になる。
 既存の治療は、すでに出来上がっている薬に患者さんを当てはめてみる療法なので効く人と効かない人の差があり、副作用も強く出やすい。一方、オーダーメイド治療は患者さんに合わせて薬を作るので、ほとんど副作用がなく、よく効くのも当然のことだ。
 UDXヒラハタクリニックの平畑徹幸院長は、「がんの部位や種類に関係なく、どんながんにも対応できる。遺伝子診断の約120の検査項目の中には約10項目の血液がんの遺伝子も含まれているので、白血病などのがんも超早期に発見でき、治療もできる」と話す。
平畑院長


【複数の遺伝子療法を重ねて治療を進めていく】

 UDXヒラハタクリニックのがんの治療法(遺伝子治療)は、〈表1〉のようにいくつもの療法を複合的に重ねて行っていくものだが、低容量の化学療法と分子標的治療以外は、どれも同院の遺伝子工学の技術を駆使して作られた製剤を使って行われている。
「がん遺伝子治療でメインになるのは大きく別けて『遺伝子免疫療法』と『がん抑制遺伝子治療』の二つ。DNAワクチン、樹状細胞治療、マルチサイトカイン、スーパーNK細胞治療などをベースに治療を進めながら、同時にがん抑制遺伝子治療の容量を徐々にあげていく。がん抑制遺伝子治療は、p53、FUS‐1、TRAIL(トレイル)、IL24などの複数の抑制遺伝子を組み合わせたカクテル療法になる」(平畑院長)
 投与の方法は、静脈からの点滴、がんにつながる動脈への注射、腫瘍内注射など、がんの種類、部位、大きさによって様々なアプローチの仕方があるという。

《遺伝子免疫療法》 ・オーダーメイドのDNAワクチン
・オーダーメイドの樹状細胞ワクチン
・サイトカイン遺伝子/たんぱく質
・サイトカイン遺伝子導入を伴う/伴わないNK細胞
《がん抑制遺伝子治療》 ・複数のがん抑制遺伝子(p53、MDA、FUS1、p16)とリポソーム
・キャリアの併用
《幹細胞治療》 ・がん破壊遺伝子/自殺遺伝子を幹細胞に導入
《化学療法》 ・化学的感受性とファーマゲノミクス検査結果に準拠
《分子標的治療》 ・上皮成長因子受容体(EGFR):イレッサ、タルセバ
・血管内皮成長因子(VEGF):アバスチン


【国内のがん遺伝子治療の現状】

 ただ、「遺伝子診断」や「遺伝子治療」の受付を表記する国内の医療機関のすべてがUDXヒラハタクリニックと同様の設備が整い、同じ治療内容で行われているかといえば、そうではない。はっきりいってしまえば、自前で診断(検査)、治療(薬剤の作成)を一貫して行える環境をもつ医療機関は、国内では同院以外には皆無。遺伝子研究を行っている大学などの国内の研究機関であっても、がん関連の遺伝子の項目の選定さえも十分にできていないのが現状だという。


→写真:遺伝子ラボ
UDXヒラハタクリニック内に設置されている遺伝子ラボ。遺伝子診断から製剤作成まで当院で一貫して行われている


 平畑院長は、「日本の遺伝子医学が臨床で広く実用できる段階に至るまでには、まだだいぶ年月がかかると思う」と、こう続ける。
「よく知られるがん抑制遺伝子である“p53”一つだけを使って『がん遺伝子治療を行っている』と標ぼうする医療施設もみられるが、“p53”だけではがんを完全に叩くことは不可能。それに日本で使われている“p53”は中国から輸入されたもので、中国製は局所用で全身投与用ではない。またアデノウイルスを使って作られているので今後、どんな副作用が現れるかよく分かっていないのが怖い」
 UDXヒラハタクリニックが行っているがん遺伝子診断・治療の技術は、10年以上前から臨床で実用されてきた元韓国中央大学教授のウー・チュル・ムーン医師が開発した技術を平畑院長が学び、導入したものだ(詳細は別項参照)。
 日本国内ではがん遺伝子の検査会社はあっても、平畑院長のようにそのデータに基づき正確な診断ができ、実際のがんの臨床現場で“遺伝子レベルの治療”を行える医師が他にまだいないのが現状だ。
 
【平畑院長と「がん遺伝子診断・治療」との出会い】
9年前、当時、東京・渋谷でクリニックを開業していた平畑院長は主にアンチエイジング医療を中心に行っていたが、「アンチエイジングで元気になっても、がんで死んでしまったら終わりだ」と思うようになり、がん治療に目を向ける。そして、がん治療には遺伝子レベルでの解決が不可欠と考え、がん遺伝子分野の教えを請うため、あらゆるルートで専門家を探す。
そんな折、韓国在住の友人から当時、韓国中央大学教授で、すでに“がん遺伝子診断・治療”を開発し、実用段階に入っていたウー・チュル・ムーン医師の存在を知らされる。以来、ムーン医師の指導のもと遺伝子診断と治療を学ぶ。
現在、ムーン医師はメキシコとバハマに米国人を対象とした専門医療機関をもち、平畑院長とは常に情報の共有、医療の提携を行っている。共有するがん遺伝子解析のデータベースは4000症例を超える。


 次回は、がん遺伝子治療の奏効率、治療を受けるタイミングなどについて取り上げる。





平畑院長
遺伝子療法最前線―(1)

『がん発生のメカニズムと
“超早期発見”の重要性』


取材協力:UDXヒラハタクリニック


プロフィール
長崎生まれ。東邦大学を卒業後に同校第一内科に勤務。その後、米国イーストカロライナ血液腫瘍科、リサーチフェローで学び、帰国後に渋谷でクリニックを開業。9年前に遺伝子診断と治療に出会い、国内でも遺伝子治療を実施。2008年10月に、がん遺伝子治療専門の施設として、秋葉原UDXビルにもクリニックを開設。これまでに100名以上のがん患者を治療してきており、1年間360日以上、ほとんど休みなく患者さんの対応にあたっている。酒もタバコもやらないうえ、UDXヒラハタクリニックを開設してからは、趣味も一切止めており、もっぱらがんの治療と治療薬の開発にあたっている。


これまで従来のがん治療は、目に見える“細胞レベル”での診断・治療が行われてきた。しかし、世界のがん研究は“遺伝子レベル”で進められており、がんの原因は遺伝子にあることが解明されてきている。次世代の最先端がん治療として期待される「がん遺伝子診断・治療」とは、どのような療法なのか。国内唯一のがん遺伝子専門医療機関である「UDXヒラハタクリニック」(東京・秋葉原)の取り組みを4回にわたりレポートする。


【がんは遺伝子の病気】


 がんの発生には多くの遺伝子がかかわっているが、その機能から大きく「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」に別けられる。
「がん遺伝子」は、本来、体の細胞が正常に分裂、増殖するのに必要な遺伝子で、一方、「がん抑制遺伝子」は細胞の分裂、増殖にブレーキの役目を果たしている。ところが、これらの遺伝子が、発がん物質、タバコ、ウイルス、放射線、紫外線など、何らかの影響で変異して、がん遺伝子が多く出現したり、抑制遺伝子が働かなくなることで無秩序な分裂、増殖が起こり、最終的にがんなどの悪性腫瘍になってしまう。がんの根本的な原因は、がん遺伝子の変異で起こる“遺伝子病”なのだ。
UDXヒラカタクリニックが入居する
秋葉原UDX外観


【どんな微小のがんも見逃さない遺伝子診断】

 ただし、遺伝子の変異したがん細胞は、誰の体内でも毎日作り続けられている。がん細胞の数が1万個未満であれば自分の免疫力で排除できるが、それ以上になると排除できなくなり増殖を続ける。
 UDXヒラハタクリニックの平畑徹幸院長は、「がん細胞の数は10の何乗の単位で表すが、CTやMRIで確実に発見される最小単位は直径約1センチ。これはすでに10の9乗個(10億個)の細胞が集まってできる大きさです。つまり従来の“細胞レベル”でのがん診断では、1万個から10億個まで増える10年から30年の間にがんを見つける手段がないのです」と指摘する。
 ところが「遺伝子診断」の優秀なところは、遺伝子で調べるので、がん細胞が体に存在している限りは診断が可能。早期発見どころか、「超早期発見」ができるのだ。




【がん遺伝子の異常の中身でがん予防の先手を打つ】

「遺伝子診断」で必要になる検体は、30mlほどの血液採取だけだ。「マルチプレックス分子検査システム」と呼ばれる専用の検査器にかけると、約120項目にわたるがん遺伝子情報を得ることができる。
 がん遺伝子の異常が、どのくらい発現しているのか、がん抑制遺伝子がどのくらい化学的な変化を起こし変異しているのか、フリーDNAの濃度と長さがどのくらいあるのかなど明確に分かるという。
 がん遺伝子の異常の個数によって、0は問題なし、1〜5個は良性腫瘍、6〜10個は前がん状態、11個以上は活動性のがんと、ある程度がんのリスクを段階的な指標で予測することができるが、重要なのはそれだけではない。
「がんの悪性度の高い時に発現してくるがん関連遺伝子がいくつかあって、どのがん遺伝子が点滅しているのか異常の中身を調べることが非常に重要になる。将来的にどこの部位にがんができやすいのか、また生活習慣の改善で、そのがん遺伝子が消える可能性があるのかどうかまでハッキリ分析することができます」(平畑院長)。
 すでに、がん治療を終えた人であれば、再発の可能性も考えて、どの部位を重点的に検査を受けて見て行けばいいのか、がん予防で先手を打つことができる。
 平畑院長は、「従来なら目に見えないはずのがん発生の過程を、目に見えるような形であぶり出す。それが遺伝子診断なのです」と話す。

 次回は、遺伝子診断で得た個々のがん患者さんのがん遺伝子情報を基に、どのようなオーダーメイド治療が行われているのか紹介する。

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